私は白状する。今回の田島の展示は理解し得ない、と。その場で沈思黙考しても届かないものがある。が、例えその時点でそうであっても、後々思考を重ねては、自分なりの論理展開や経験値との擦り合わせから、導き出した解釈が作品に血を通わせ、肉を付ける。しかし今回はそれが不可能に近い。何故なら、それを試みようとしても、ある咀嚼音しか蘇らないのだ。その咀嚼音に寄って、見事に全てが打ち消されている。その徹底した咀嚼行動は、消化のために残された反芻の余地を奪い去り、思考をも粉砕してしまった。これは全くの個人的な見解であるが、苦肉の策としてあえて言う。今回の田島の試みを、こう解釈する他はない。この世の全ての出来事は、咀嚼されなければならない。それは、理解の比喩としての「咀嚼」ではなく、咀嚼自体が目的とも言える、ただただ完結された咀嚼であり、排泄器官すらも存在しない純粋破壊。我々はこの世の果てまで咀嚼し尽くさなければならない宿命を背負っている、人間と言う現象。そして咀嚼が完了した彼方に、竹の様に立ち上がるのが「放下」である。ハイデガーの「放下」とは、宇宙の終わりに予測されるビッグクランチのその瞬間に咀嚼するものを全て失い、ようやく訪れる心地よくも絶望的な喪失感なのであろうか。
「ハイデガーの技術論」そう題された田島の展覧会は、観るものを噛み砕こうと、今も口を開けているのだ。
ビッグクランチ… その日を待ちわびる私は、今だ耳の奥の蝸牛に谺する、咀嚼音に苛まれている。
田島 鉄也 個展 <ハイデガーの技術論>
2014年1月27日〜2月1日(11:30-19:00 最終日-17:30)
ギャラリー現 東京都中央区銀座1-10-19 銀座一ビル3F tel 03-3561-6869
http://g-gen.main.jp/
田島鉄也のメッセージサイト「感覚で世界を捉える」
http://te-tajima.blogspot.com/
こちらもお見逃しなく!
高野 浩子展「想い出について -About Memories-」
2014年1月24日〜2月1日(11:30-19:30 最終日-16:00)
いりや画廊 東京都台東区北上野2-30-2
http://www7b.biglobe.ne.jp/~gallery_iriya/
(こっちもある意味、噛まれちゃうかも〜笑)